(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 ヘアスタイルを変えられたことを指摘される。この情報は高校メンバーは誰も知らない。でもなぜか、日高くんは知っている。さらに、髪型の変わった私のことを見間違えていない。
 思わず画面から視線を上げて、周りをみた。でも混雑する電車であれば、知らない町の人ばかりである。日高くんの姿など、みえない。
 でも、電車の乗る前のホームで私のことを見かけたとしたら、こんなメール、あり得るだろう。
 だから、こう返してみた。

 『なんでパーマ当てたこと、知ってるの?』
 ――だって、ここからよくみえるよ。すごく似ているから、メール出して確認したんだけど。

 (え! ここからよくみえる?)

 もう一度、私は日高くんの姿を探して、周りをしっかり凝視した。ここからよくみえるとなれば、同じ電車に日高くんもいるはずだ。
 でも、見つけることができない。
 突然のメールにドキドキしている私に向って、スマホ画面はさらに追い打ちをかけた。

 ――白井さん、時間ある? 次の駅で降りて。

 (はい?)

 私が降りる駅はまだまだ先で、それは途中下車となる。
 嫌だとも、ちょっと待ってとも、返信を打つ前に電車は減速した。慣れないヒールであれば、転ばないようにするので精一杯、返信どころではない。
 プシューという圧縮空気音とともにドアが開く。ここはターミナル駅らしく大勢の人が降りた。下車人の大きな流れに飲み込まれるように、私も電車を降りていたのだった。
 ブーンと汽笛を鳴らして、電車が去っていく。ホームの乗客は次の目的に向かって散っていく。その中で、私はただ茫然となってその場に立っていた。

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