(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
大学二年生・三月*かの地では、雨は降るのか、桜は咲くのか
 ――春一番ってさ、北海道にはないんだぜ。
 ――ふうん、そうなんだ。初耳~。
 ――春一番はないけど、代わりに雨一番っていうのがあるんだ。
 ――雨一番?
 ――雪の混ざっていない水だけの雨のことらしい。この雨が降ると春なんだ。



 高校二年生の三月の、風の強い日の放課後、日高くんと季節限定パフェを食べた。イチゴと生クリームがこれでもかとぎゅうぎゅうに詰まったパフェである。
 当初は「二年生お疲れ様会」と称して、仲良し女子四人組でこれを食べにいく予定であった。
 しかし当日、春一番を思わせる強風が吹き、電車遅延を警戒して私たちはお別れパフェ会を中止にした。
 それと入れ替わるかのように、私はクラスメイトの日高くんにこう誘われたのだ。

 ――白井さん、ひとり? どう、パフェ食べない?

 このひと言で、私の中の日高くんの存在が「ただの同じクラスの人」から「ちょっと気になる人」へと変った。


 †††


 「雨一番って、お天気のコーナーで出る表現じゃなんだ」
 「だって雨一番って雪の混ざらない雨だから、雨が上がるまではっきりいえないからね~」
 何気に北海道の大規模農園での実習先で、地元の人にきけばそんな回答をもらう。
 実習先からバスで宿泊先まで戻る途中、私はそれをふと思い出した。

 (そうよね、はじめは雨でも途中からみぞれになることだってあるし)
 (雨が終わってはじめてわかる『雨一番』か)
 (確かに、実況では使えないわよね)

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