(悩める)リケジョの白井さんと(気ままな)リケダンの日高くん
 バス窓からみえる空は、鉛色。今にも雨が、いや雪が降りそうだ。こちらにきてから、ずっとそう。
 春一番は強風だから、吹けばその場でそうといえる。でも雨一番は、それができない。簡単なできない理由なのだが、指摘されるまで気がつかなかった。これも目からうろの気分だ。

 ところ変われば気候が変わり、季節の表現も変わる。
 三年前の高校二年生の三月に、日高くんと「春一番」と「雨一番」の話をした。そのときは、面白いマメ知識ぐらいであった。
 しかしそれだけで終わらず、三年後の私は三月の北海道にいる。農学部の校外実習を利用して、ここ北海道にきてしまった!
 この実習は大学生二年生から三年生に進級する春休みに行われる選択科目である。大学キャンパスを飛び出して大規模農園の実際を体験する実習なのだが、受け入れ施設の都合で全員が同じところへいくことはできない。ゆえに複数の実習先が用意されていた。
 実習終了後はそこから帰省するために実家に近い実習先にする、いってみたい観光地のある地区を選ぶ、真面目に農園運営の内容を吟味して縁もゆかりもない土地へいくと、皆が皆、思うところがあって実習先を決めた。
 その中で、私は北海道にした。

 ――春一番ってさ、北海道にはないんだぜ。
 (それって、本当?)

 ――春一番はないけど、代わりに雨一番っていうのがあるんだ。
 (雨一番って、どんな雨? 本土とは違うのかな?)

 ――雪の混ざっていない水だけの雨のことらしい。この雨が降ると春なんだ。
 (今の時期の北海道なら、まさにその雨一番を体験できるのでは?)

 そう、私は日高くんが教えてくれた「雨一番」を確かめるべく、北海道の実習先を希望したのであった。
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