窓明かりの群れに揺れる
その少し後。
春奈は、
給湯室でお茶を淹れようとしていた。
ふと耳に入ってきたのは、
先輩たちのひそひそ声だった。
「ねえ、やっぱりさ、
恵さんと達也くんの間って、
なんかあるよね」
「この前も二人して
同じタイミングで休んでたしね」
「前から仲良かったけど、
最近ちょっと空気違う感じしない?」
「なんか、深刻そうな……
付き合ってるとか、そういう次元じゃ
ないやつ」
「えー、なにそれ。
怖いこと言わないで」
ぼやっとした噂話。
具体的な言葉は何ひとつ出ていない。
それなのに、
春奈の胸の奥で、何かが冷たく沈んでいく。
(……まさか)
紙コップを持つ手に、少しだけ力が入った。
午後、
コピー室で資料を揃えている直樹を見つけて、
春奈は思い切って声をかけた。
「あの、直樹さん」
「ん?」
「あの……
さっき、先輩たちが話してたんですけど」
言い淀みながらも、なんとか続ける。
「恵さんと達也さんの間に、
“何かあるんじゃないか”っていう噂、
聞いたことあります?」
直樹の表情が、ほんの一瞬だけ固まった。
それは、見逃せない一瞬だった。
「……変な噂話は、
あんまり信じないほうがいいよ」
いつもより少しだけ固い声。
「仕事してるとさ、
誰と誰がどうだとか、すぐ話のネタに
されるから。
あんまり気にしないほうが、春奈のため」
「ですよね……
すみません、変なこと聞いて」
「いや。
気になるのはわかるけどさ」
言葉の端に、
何かを飲み込んでいる気配があった。
それでも、
(直樹さんがそう言うなら……)
春奈は、
自分にそう言い聞かせるように頷いた。
少しだけ、安心する。
それは、
信じたいものを信じようとする気持ちに
近かったのかもしれない。
春奈は、
給湯室でお茶を淹れようとしていた。
ふと耳に入ってきたのは、
先輩たちのひそひそ声だった。
「ねえ、やっぱりさ、
恵さんと達也くんの間って、
なんかあるよね」
「この前も二人して
同じタイミングで休んでたしね」
「前から仲良かったけど、
最近ちょっと空気違う感じしない?」
「なんか、深刻そうな……
付き合ってるとか、そういう次元じゃ
ないやつ」
「えー、なにそれ。
怖いこと言わないで」
ぼやっとした噂話。
具体的な言葉は何ひとつ出ていない。
それなのに、
春奈の胸の奥で、何かが冷たく沈んでいく。
(……まさか)
紙コップを持つ手に、少しだけ力が入った。
午後、
コピー室で資料を揃えている直樹を見つけて、
春奈は思い切って声をかけた。
「あの、直樹さん」
「ん?」
「あの……
さっき、先輩たちが話してたんですけど」
言い淀みながらも、なんとか続ける。
「恵さんと達也さんの間に、
“何かあるんじゃないか”っていう噂、
聞いたことあります?」
直樹の表情が、ほんの一瞬だけ固まった。
それは、見逃せない一瞬だった。
「……変な噂話は、
あんまり信じないほうがいいよ」
いつもより少しだけ固い声。
「仕事してるとさ、
誰と誰がどうだとか、すぐ話のネタに
されるから。
あんまり気にしないほうが、春奈のため」
「ですよね……
すみません、変なこと聞いて」
「いや。
気になるのはわかるけどさ」
言葉の端に、
何かを飲み込んでいる気配があった。
それでも、
(直樹さんがそう言うなら……)
春奈は、
自分にそう言い聞かせるように頷いた。
少しだけ、安心する。
それは、
信じたいものを信じようとする気持ちに
近かったのかもしれない。