窓明かりの群れに揺れる
 翌日
 達也が、いつも通りの時間に出社してきた。

 「おはようございます」

 春奈が声をかけると、
 達也は少しだけ驚いたように目を瞬かせ、
 それから笑顔を作る。

 「おう。おはよう」

 「体調、大丈夫ですか?」

 「うん。
  ちょっと用事が立て込んでただけ」

 その笑顔が「作り物」だと気づくのに、
 時間はかからなかった。

 それでも――
 今日は少しだけ、勇気を出したかった。

 「あの……
  もしよかったら、今日こそ一緒に
  夕食どうですか?」

 一瞬の沈黙。
 
 達也は、視線をデスクの上に落とし、
 それから、ゆっくりと顔を上げた。

 「……俺も、
  そう言おうと思ってた」

 「え?」

 「話したいことがあるんだ」

 胸の奥が、
 一瞬だけ明るくなる。

 (ちゃんと向き合ってくれるんだ。
  この前のことも、全部含めて
  話してくれるのかもしれない)

 そんな期待が、
 自然と膨らんでいくのを
 止められなかった。
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