窓明かりの群れに揺れる
仕事が終わったあと。
会社から少し離れた、
前にも行ったイタリアン風のレストラン。
「なんか、久しぶりですね、ここ」
「だな」
店内の柔らかい照明。
ワイングラスの音。
周りのテーブルから聞こえる笑い声。
春奈は、少し緊張しながらも、
できるだけ明るく振る舞った。
「最近、プロジェクトも
落ち着いてきましたし、
またみんなで飲み会したいですね。
恵さんも元気になったら、四人で」
「春奈」
不意に、
達也の声がかぶさる。
さっきまで作り笑いを浮かべていた顔から、
ふっと表情が抜け落ちた。
目の前のグラスの影が、
テーブルの上で少し揺れる。
「……ゴメン」
ボソッと落ちた一言は、
いつもの達也の声とは違っていた。
「え?」
「俺――」
短く息を吸い込んで、言葉を絞り出す。
「恵と、一緒になる」
その瞬間、
何かが頭の中で破裂したみたいに、
音が消えた。
「……今、なんて」
自分の声が、
かすれているのがわかる。
「恵と、一緒になる。
ちゃんと話して、そう決めた」
達也は、
視線をどこにも定められないまま、
テーブルの木目を見つめながら続ける。
「何があったのか、
全部をここで話せる自信はないけど……
責任とか、そういう言葉だけじゃなくて、
俺も覚悟を決めなきゃいけないと思ってる」
「責任……?」
その単語だけが、
胸の中で異様に膨らむ。
「じゃあ、私は……?」
そう問おうとした声は、
最後まで形にならなかった。
達也は何も答えない。
答えられないように見えた。
それが、
何よりもはっきりした「答え」だった。
椅子を引く音が、
やけに大きく響く。
「ごめ――」
もう一度謝罪の言葉が落ちてくる前に、
春奈は立ち上がっていた。
視界が熱で滲む。
レストランの柔らかい照明が、
全部ひどく眩しく感じる。
「すみません」
誰に向けたのか
自分でもわからない一言だけ残し、
春奈は、ほとんど駆け出すように
店を飛び出した。
会社から少し離れた、
前にも行ったイタリアン風のレストラン。
「なんか、久しぶりですね、ここ」
「だな」
店内の柔らかい照明。
ワイングラスの音。
周りのテーブルから聞こえる笑い声。
春奈は、少し緊張しながらも、
できるだけ明るく振る舞った。
「最近、プロジェクトも
落ち着いてきましたし、
またみんなで飲み会したいですね。
恵さんも元気になったら、四人で」
「春奈」
不意に、
達也の声がかぶさる。
さっきまで作り笑いを浮かべていた顔から、
ふっと表情が抜け落ちた。
目の前のグラスの影が、
テーブルの上で少し揺れる。
「……ゴメン」
ボソッと落ちた一言は、
いつもの達也の声とは違っていた。
「え?」
「俺――」
短く息を吸い込んで、言葉を絞り出す。
「恵と、一緒になる」
その瞬間、
何かが頭の中で破裂したみたいに、
音が消えた。
「……今、なんて」
自分の声が、
かすれているのがわかる。
「恵と、一緒になる。
ちゃんと話して、そう決めた」
達也は、
視線をどこにも定められないまま、
テーブルの木目を見つめながら続ける。
「何があったのか、
全部をここで話せる自信はないけど……
責任とか、そういう言葉だけじゃなくて、
俺も覚悟を決めなきゃいけないと思ってる」
「責任……?」
その単語だけが、
胸の中で異様に膨らむ。
「じゃあ、私は……?」
そう問おうとした声は、
最後まで形にならなかった。
達也は何も答えない。
答えられないように見えた。
それが、
何よりもはっきりした「答え」だった。
椅子を引く音が、
やけに大きく響く。
「ごめ――」
もう一度謝罪の言葉が落ちてくる前に、
春奈は立ち上がっていた。
視界が熱で滲む。
レストランの柔らかい照明が、
全部ひどく眩しく感じる。
「すみません」
誰に向けたのか
自分でもわからない一言だけ残し、
春奈は、ほとんど駆け出すように
店を飛び出した。