窓明かりの群れに揺れる
『本当は、俺の口から
言うことじゃないんだけどな』
低く、抑えた声。
『でも、
このまま何も知らないでいるほうが、
もっときついと思うから言うよ』
ほんの短い間を置いて、
直樹が続ける。
『……恵さん、妊娠してる』
その一言で、
世界が裏返ったような感覚がした。
「……え?」
胸の奥で何かが音を立てて崩れた気がした。
「だって……そんな……」
言葉にならない。
“どういうことですか”と、
ようやく絞り出したあとも、
喉が上手く動いてくれない。
『経緯は、全部聞いたわけじゃないけど……
体調崩して、検査受けて、
結果が出たって』
直樹の声も、どこか苦しそうだった。
『そのあと達也とちゃんと話してさ。
恵さんは“一人でも産む”って言って……
それで――』
「――もう、いいです」
春奈は、
思わず言葉をかぶせていた。
『春奈さん……』
「それ以上は、
聞きたくありません……」
絞り出すだけで精一杯だった。
「ごめんなさい。
今日は……もう切ります」
『待て、春奈。少しだけ――』
「本当に、もう大丈夫ですから」
自分でも「大丈夫」
じゃないことはわかっていた。
それでも、
それ以上なにかを聞いてしまったら、
今ここで立っていることすら
できなくなる気がした。
ほとんど逃げるように、
通話を切る。
画面が暗くなったスマホだけが、
やけに重たく手の中に残った。
どうやって自分の部屋まで帰り着いたのか、
春奈はほとんど覚えていなかった。
言うことじゃないんだけどな』
低く、抑えた声。
『でも、
このまま何も知らないでいるほうが、
もっときついと思うから言うよ』
ほんの短い間を置いて、
直樹が続ける。
『……恵さん、妊娠してる』
その一言で、
世界が裏返ったような感覚がした。
「……え?」
胸の奥で何かが音を立てて崩れた気がした。
「だって……そんな……」
言葉にならない。
“どういうことですか”と、
ようやく絞り出したあとも、
喉が上手く動いてくれない。
『経緯は、全部聞いたわけじゃないけど……
体調崩して、検査受けて、
結果が出たって』
直樹の声も、どこか苦しそうだった。
『そのあと達也とちゃんと話してさ。
恵さんは“一人でも産む”って言って……
それで――』
「――もう、いいです」
春奈は、
思わず言葉をかぶせていた。
『春奈さん……』
「それ以上は、
聞きたくありません……」
絞り出すだけで精一杯だった。
「ごめんなさい。
今日は……もう切ります」
『待て、春奈。少しだけ――』
「本当に、もう大丈夫ですから」
自分でも「大丈夫」
じゃないことはわかっていた。
それでも、
それ以上なにかを聞いてしまったら、
今ここで立っていることすら
できなくなる気がした。
ほとんど逃げるように、
通話を切る。
画面が暗くなったスマホだけが、
やけに重たく手の中に残った。
どうやって自分の部屋まで帰り着いたのか、
春奈はほとんど覚えていなかった。