窓明かりの群れに揺れる

39.確かめ合う二人

 最初のキスから、もう後戻りしないことは
 お互いに分かっていた。

 触れた瞬間から、
 どこかにしまっていたなにかの
 スイッチが一気に入る。

 唇が離れるたびに、呼吸が荒くなって、
 またすぐに求め合うみたいに重なっていく。

 指先が腕をなぞるだけで、
  熱がじわじわと広がる。
 
 胸の奥で鳴っている鼓動は、
 とっくに自分のリズムを見失っていた。

 強く引き寄せられて、
 背中とシーツのあいだに逃げ場がなくなる。

 それでも、逃げたいとは思わない。

 絡み合った体温の高さだけが、
 今ここにいる自分たちの“本気さ”みたいで、
 むしろもっと確かめたくなる。

 すべての布がベッドの隅に追いやられ、
 二人の間には隔たりはない。

 近すぎる距離で交わる息づかい。
 肌に触れる手のひらは、
 最初から遠慮というものを忘れたみたいに、
 まっすぐ欲しい場所だけを探してくる。

 触られた瞬間、体中が熱くなるり、
 全ての力が抜けていく

 くり返し、その温かさと、吐息の感触に、
 身体が溶けていく感触が続く

 ゆっくりと抱きしめられる、深く重なる体温に、
  (ふいに力が強くなって、)
 思わず爪がシーツを掴む。

 ゆっくりと繰り返される深い包容に、
 声にならない吐息が漏れる

  「……くっ」

 こんな感じは今まで無かった
 苦しく、激しくも無く、深い包容に、
 無意識に背中に腕が回る

 言葉にならないため息が、
 のどから漏れ出す。

  「あ……っ」

 背中に回した手に、思わずギュッと力が入って、
 意識がにじんでいく。

 名前を呼ぼうとしても声にならず、
 喉の奥で熱だけが震えた。

 ひとつひとつの動きが、
 容赦なく深くなんども入り込んでくる。

 余裕なんてものはあっという間に剥がされて、
 ただ本能みたいな「もっと」が
 身体の中を駆け回る。

 重なるたびに、身体がますます熱くなる。
 天井も壁も、時計の音さえ消えていって、
 あるのは擦れ合う鼓動と乱れた呼吸だけ。

 どこまで続いて、
 どこで終わるのかなんて考える隙もない。

 少し緩んだかと思えば、また深く、
 また激しく求め合って、
 気づけば、
 何度目かさえ数えられないほど
 同じ波に飲まれていた。

 強く引かれたと同時に、
 全身の力が入り、背中に爪を立てる。

 おおきく乱れた吐息が、
 容赦なく口から漏れ出る。

  「いっ……く!」 

 一瞬にして全身が無意識に震えて、
 ベッドに沈み込む

 無空間にひたすらふわふわと落ちていく

 無重力空間に体が浮いているように。

 意識が少しずつ体に戻ってくる、
 ふっと瞼を開け、弘樹と目線があい、
 恥ずかしさと幸せが交差する。
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