窓明かりの群れに揺れる
弘樹は
愛おしく、春奈を抱きしめていた。
春奈の体が、腕の中でふっと力を抜いた。
さらに抱き寄せると、
春奈の身体が、前に沈んだ。
シーツに伏せた背中が、
小さく上下している。
――ここで、やめるべきだ。
弘樹は、はっきりそう思った。
背後にいる自分の立場も、
年齢も、
この先のことも、
全部わかっている。
それでも。
背中越しに伝わる呼吸が、
あまりにも近くて、
あまりにも無防備で
柔らかな美しいライン。
掴んだ指先に、思わず力が入る。
(……違う)
春奈を壊したくない。
守る側でいるはずだった。
なのに、
一度触れてしまった温度が、
もう戻れないことを、
身体のほうが先に知ってしまっていた。
長い間忘れていた、この感触に
この感覚に、徐々に理性が薄くなっていく。
背中に沿うわずかな動き。
それに応えるように、
春奈の呼吸が乱れる。
やめろ、と
頭のどこかで声がする。
けれど、
終わらせた瞬間に、
彼女のこの熱も、
この選択も、
すべて否定してしまう気がして。
(……逃げるな)
それは、
春奈に向けた言葉なのか、
自分自身に向けた言葉なのか、
もうわからなかった。
同じ場所をなぞるたび、
背中越しに伝わる吐息が、
答えを奪っていく。
一度ほどけて、
また引き戻される。
その繰り返しに、
数を数える意味はなくなっていた。
守るつもりでいるのに、
もう止まらない、
もう手放せない。
その矛盾ごと、
背後から包み込むしかなかった。
強く、そして優しく
深く、そして浅く
早く、そしてゆっくりと
やがて、
春奈の背中が大きく揺れて、
一瞬、すべてが吸い込まれ
そしてギュッと温かく包まれる。
思わず大きな吐息と共に
支える手に力が入る。
「うっ!……」
視界が白く弾けて、全身が貫かれる。
弘樹は、
目を閉じた。
――選んでしまった。
もう戻らない場所に、
自分も足を踏み入れたことを、
はっきりと自覚しながら。
愛おしく、春奈を抱きしめていた。
春奈の体が、腕の中でふっと力を抜いた。
さらに抱き寄せると、
春奈の身体が、前に沈んだ。
シーツに伏せた背中が、
小さく上下している。
――ここで、やめるべきだ。
弘樹は、はっきりそう思った。
背後にいる自分の立場も、
年齢も、
この先のことも、
全部わかっている。
それでも。
背中越しに伝わる呼吸が、
あまりにも近くて、
あまりにも無防備で
柔らかな美しいライン。
掴んだ指先に、思わず力が入る。
(……違う)
春奈を壊したくない。
守る側でいるはずだった。
なのに、
一度触れてしまった温度が、
もう戻れないことを、
身体のほうが先に知ってしまっていた。
長い間忘れていた、この感触に
この感覚に、徐々に理性が薄くなっていく。
背中に沿うわずかな動き。
それに応えるように、
春奈の呼吸が乱れる。
やめろ、と
頭のどこかで声がする。
けれど、
終わらせた瞬間に、
彼女のこの熱も、
この選択も、
すべて否定してしまう気がして。
(……逃げるな)
それは、
春奈に向けた言葉なのか、
自分自身に向けた言葉なのか、
もうわからなかった。
同じ場所をなぞるたび、
背中越しに伝わる吐息が、
答えを奪っていく。
一度ほどけて、
また引き戻される。
その繰り返しに、
数を数える意味はなくなっていた。
守るつもりでいるのに、
もう止まらない、
もう手放せない。
その矛盾ごと、
背後から包み込むしかなかった。
強く、そして優しく
深く、そして浅く
早く、そしてゆっくりと
やがて、
春奈の背中が大きく揺れて、
一瞬、すべてが吸い込まれ
そしてギュッと温かく包まれる。
思わず大きな吐息と共に
支える手に力が入る。
「うっ!……」
視界が白く弾けて、全身が貫かれる。
弘樹は、
目を閉じた。
――選んでしまった。
もう戻らない場所に、
自分も足を踏み入れたことを、
はっきりと自覚しながら。