窓明かりの群れに揺れる
 春奈は、腕の中で温かく包容されている
 
 更に抱きしめられ、
 顔がシーツに沈む。

 ぎゅっと、
 思わず掴んだ指先に、
 自分でも驚くほど力が入っていた。

 背中から伝わる吐息が、
 首元に絡みつくたび、
 さっき静まったはずの熱が、
 また、ゆっくりと戻ってくる。

 終わったと思ったのに――

 もう一度だけ、と思ったはずなのに、
 気づけば、また同じ熱の中に戻っていた。

 身体の奥が、勝手に目を覚ます。
 支える手が、
 逃がさないみたいに重なって、
 その安心感に、
 抗う理由が見つからなくなる。

 深く、
 何度も、
 声にならない吐息が何度も漏れる

  「んっ……」

 同じところをなぞられるたびに、
 息を吸うことさえ忘れていく。
 声にならない音が漏れた瞬間、
 また一段、
 身体の力が抜ける。

 一度ほどけて、
 また引き戻されて、
 その繰り返しに、
 もう数える意味もなくなっていた。

  「ふっ……うっ」

 背中から包まれるたび、
 さっきよりも深く、
 さっきよりも強く、
 意識が遠のいていく。

 終わらせてもらえないのに、
 それが、
 なぜか苦しくない。

  (もっと……)

 震えが収まる前に、
 また、
 次の波が激しく押し寄せてくる。

 まるで羽ばたくように、
 思わずギュッとシーツを掴む。

 ベッドに顔から胸まで沈み込む。
 深く押し込まれた熱で、
 体中が一瞬にして熱くなる。

 容赦なく、激しく吐息が漏れる

  「……いっ……く……」

 一瞬、全身が波打つように震えて、
 顔から、胸から、全身がベッドに潜り込む。
 意識がふわりと遠のく。
 無意識の世界に落ちていく、
 そして、何かに包まれたまま、
 深いところへ漂っていく。

 どれくらい経ったのか、
 息をしていなかったのか
 ただ、
 背中越しのぬくもりが
 「大丈夫」と言っているみたいで、
 私はそれに頷く(うなず)代わりに、
 もう一度だけ息を吐いた。

 ふいに、頬に触れた指先の感触で、
 少しだけ現実が戻ってくる。

 息が、ようやく深く吸える。
 からだは重たいのに、
 その温かく受け止めている重さが
 甘くて、愛おしい。

 恵のことを、どこか遠い存在だと
 思っていた。
 でも今は、その理由が、はっきりわかる。
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