窓明かりの群れに揺れる
40.窓明かりの群れの中
時は流れて。
達也は、思わぬ形で評価されることになった。
前回のプロジェクトで見せた準備量と、
攻めの提案を組み立てる力――
結果こそ通らなかったものの、
その「熱量」は、
きちんと上層部に届いていた。
送別会の帰り際、
達也と直樹がロビーで話している
「……正直、あの時はやり過ぎと思ってる」
達也は少し照れくさそうに笑って言った。
「でもさ、“あそこまで本気でやるやつなら、
現場任せてもいい”ってさ。
関西支社で、
しばらく準リーダー張ってこいって」
すごい
春奈は、少し離れたところで、
ふっと、本心からそう言った。
「……迷惑かけたな」
達也は、振りかえり
最後にぽつりとそれだけ言った。
謝罪なのか、
感謝なのか、
そのどちらもなのか。
春奈は、深くは聞かなかった。
春奈はそっと近づき
「あなたの優しさ、他所でやって、
戻ってきても、居場所ないから」
ボソッと小さな声で、そう返す。
(春奈もこんな言葉が、
自分から出てくるとは思わなかった)
達也は困惑した顔をしている。
春奈には、複雑な気持ちが交差していた。
達也は、
東京本社を離れた。
しばらく休職していた恵は、会社を辞めていた。
「地元に戻るんだってさ」
休憩室のテーブルで、
資料をめくりながら直樹がそう教えてくれた。
「……そうなんですね」
春奈が答えると、
直樹はそれ以上、余計な説明はしなかった。
ただ、どこか遠くを見るような目で続ける。
「噂レベルだけどさ……
入籍するんじゃないかって、……」
“噂レベル”という言葉に、
胸の中で何かが、静かに一度だけきしむ。
それでも、
以前のように大きく揺さぶられは
しなかった。
(そうなったらいいな、って……
どこかで思ってる自分もいる)
達也が、前を向いて歩く先に、
恵がいるのなら――
あの夜から止まっていた二人の時間が、
別の形でちゃんと続いていくのなら。
それはそれで、
ひとつの答えなのだと思えた。
直樹は、その後も本社に残った。
部署異動でフロアが変わり、
顔を合わせる機会は少し減ったけれど、
廊下ですれ違えば、
相変わらず「おつかれ」と
軽く笑って声をかけてくれる。
仕事ぶりも、
冗談交じりの優しさも、
ほとんど変わらない。
変わったのは、
胸の奥に沈んでいたいくつかの感情に、
それぞれそっと蓋がされた、
ということだけだった。
達也は、思わぬ形で評価されることになった。
前回のプロジェクトで見せた準備量と、
攻めの提案を組み立てる力――
結果こそ通らなかったものの、
その「熱量」は、
きちんと上層部に届いていた。
送別会の帰り際、
達也と直樹がロビーで話している
「……正直、あの時はやり過ぎと思ってる」
達也は少し照れくさそうに笑って言った。
「でもさ、“あそこまで本気でやるやつなら、
現場任せてもいい”ってさ。
関西支社で、
しばらく準リーダー張ってこいって」
すごい
春奈は、少し離れたところで、
ふっと、本心からそう言った。
「……迷惑かけたな」
達也は、振りかえり
最後にぽつりとそれだけ言った。
謝罪なのか、
感謝なのか、
そのどちらもなのか。
春奈は、深くは聞かなかった。
春奈はそっと近づき
「あなたの優しさ、他所でやって、
戻ってきても、居場所ないから」
ボソッと小さな声で、そう返す。
(春奈もこんな言葉が、
自分から出てくるとは思わなかった)
達也は困惑した顔をしている。
春奈には、複雑な気持ちが交差していた。
達也は、
東京本社を離れた。
しばらく休職していた恵は、会社を辞めていた。
「地元に戻るんだってさ」
休憩室のテーブルで、
資料をめくりながら直樹がそう教えてくれた。
「……そうなんですね」
春奈が答えると、
直樹はそれ以上、余計な説明はしなかった。
ただ、どこか遠くを見るような目で続ける。
「噂レベルだけどさ……
入籍するんじゃないかって、……」
“噂レベル”という言葉に、
胸の中で何かが、静かに一度だけきしむ。
それでも、
以前のように大きく揺さぶられは
しなかった。
(そうなったらいいな、って……
どこかで思ってる自分もいる)
達也が、前を向いて歩く先に、
恵がいるのなら――
あの夜から止まっていた二人の時間が、
別の形でちゃんと続いていくのなら。
それはそれで、
ひとつの答えなのだと思えた。
直樹は、その後も本社に残った。
部署異動でフロアが変わり、
顔を合わせる機会は少し減ったけれど、
廊下ですれ違えば、
相変わらず「おつかれ」と
軽く笑って声をかけてくれる。
仕事ぶりも、
冗談交じりの優しさも、
ほとんど変わらない。
変わったのは、
胸の奥に沈んでいたいくつかの感情に、
それぞれそっと蓋がされた、
ということだけだった。