窓明かりの群れに揺れる
ドリンクが運ばれてきて、
グラスがテーブルに並ぶ。
「じゃあ――」
四人でグラスを軽く掲げる。
「新人研修、生き延びてる組に乾杯!」
「かんぱーい!」
グラスが触れ合う音が、
思ったよりも軽やかに響いた。
最初の一口を飲んだ瞬間、
スッと喉を通る酸味と、
ほんの少しだけアルコールの熱が広がる。
「うわ、弱そうって自分で思ったけど、
意外といけるかも」
「春奈、顔真っ赤になってないから
大丈夫だよ」
恵がじっと覗き込んでくる。
「そんな見ないでよ、
恥ずかしいから」
笑いながら、
テーブルの上の枝豆に手を伸ばす。
話題は、
自然と研修のことに移っていった。
「今日のグループワーク、
あの課長さんめちゃくちゃ
厳しくなかった?」
「でもさ、言ってることは全部
正しいんだよな……って
途中で納得し始めちゃって、
最後のほう謎の感謝が生まれた」
達也の言葉に、一同笑う。
「春奈、
発表のとき落ち着いてたよね」
直樹が、
紙ナプキンを指で折りながら言った。
「全然ですよ。手、めちゃくちゃ
震えてました」
「え、そうだったの?」
「うん。
でも、“ここで震えてても仕事は
止まらないんだよな”って途中
で気づいて、
なんか、最後は開き直りました」
「それ、すごい成長の仕方だと思う」
恵が、真面目な顔で頷く。
「私なんて、
まだ『寝坊しないで会社に行けた』
で毎日自己評価してるよ?」
「それも大事」
笑いながら、
春奈はグラスを少し持ち上げた。
(ちゃんと、“社会人の会話”してる)
大学の飲み会とは違う。
地元で友達と集まるときとも違う。
自分たちの「仕事」や「これから先」の話が
当たり前のようにテーブルに乗っている。
「配属って、
どこに飛ばされるかわかんないよね」
達也がポテトをつまみながら言う。
「地方支社もあるし、営業もあるし、
開発もあるし……。
どこ行ってもそれはそれで
面白そうだけど」
「春奈は、どこ行きたいとかある?」
「えっと……
まだはっきりとは言えないですけど、
できれば、
お客さんと話せる仕事も
経験してみたいです」
言ってから、自分で少し驚いた。
面接のときよりずっと素直に、
「やってみたいこと」を口にしている。
「お、前向き〜。最初は
『人前苦手なんで裏方希望で……』って
言ってなかった?」
恵のツッコミに、思わず笑ってしまう。
「言ってましたね……
あれからいろいろあって」
“いろいろ”の中身を、
ここで詳しく話すつもりはない。
でも、東京に来るまでの間に、
自分なりに乗り越えたことがある。
その全部が、
今このテーブルの上での一言に
つながっている気がした。
グラスがテーブルに並ぶ。
「じゃあ――」
四人でグラスを軽く掲げる。
「新人研修、生き延びてる組に乾杯!」
「かんぱーい!」
グラスが触れ合う音が、
思ったよりも軽やかに響いた。
最初の一口を飲んだ瞬間、
スッと喉を通る酸味と、
ほんの少しだけアルコールの熱が広がる。
「うわ、弱そうって自分で思ったけど、
意外といけるかも」
「春奈、顔真っ赤になってないから
大丈夫だよ」
恵がじっと覗き込んでくる。
「そんな見ないでよ、
恥ずかしいから」
笑いながら、
テーブルの上の枝豆に手を伸ばす。
話題は、
自然と研修のことに移っていった。
「今日のグループワーク、
あの課長さんめちゃくちゃ
厳しくなかった?」
「でもさ、言ってることは全部
正しいんだよな……って
途中で納得し始めちゃって、
最後のほう謎の感謝が生まれた」
達也の言葉に、一同笑う。
「春奈、
発表のとき落ち着いてたよね」
直樹が、
紙ナプキンを指で折りながら言った。
「全然ですよ。手、めちゃくちゃ
震えてました」
「え、そうだったの?」
「うん。
でも、“ここで震えてても仕事は
止まらないんだよな”って途中
で気づいて、
なんか、最後は開き直りました」
「それ、すごい成長の仕方だと思う」
恵が、真面目な顔で頷く。
「私なんて、
まだ『寝坊しないで会社に行けた』
で毎日自己評価してるよ?」
「それも大事」
笑いながら、
春奈はグラスを少し持ち上げた。
(ちゃんと、“社会人の会話”してる)
大学の飲み会とは違う。
地元で友達と集まるときとも違う。
自分たちの「仕事」や「これから先」の話が
当たり前のようにテーブルに乗っている。
「配属って、
どこに飛ばされるかわかんないよね」
達也がポテトをつまみながら言う。
「地方支社もあるし、営業もあるし、
開発もあるし……。
どこ行ってもそれはそれで
面白そうだけど」
「春奈は、どこ行きたいとかある?」
「えっと……
まだはっきりとは言えないですけど、
できれば、
お客さんと話せる仕事も
経験してみたいです」
言ってから、自分で少し驚いた。
面接のときよりずっと素直に、
「やってみたいこと」を口にしている。
「お、前向き〜。最初は
『人前苦手なんで裏方希望で……』って
言ってなかった?」
恵のツッコミに、思わず笑ってしまう。
「言ってましたね……
あれからいろいろあって」
“いろいろ”の中身を、
ここで詳しく話すつもりはない。
でも、東京に来るまでの間に、
自分なりに乗り越えたことがある。
その全部が、
今このテーブルの上での一言に
つながっている気がした。