窓明かりの群れに揺れる

20.不意の電話

 湘南ドライブから、
 そう間を置かずに――
 春奈と達也は、
 もう一度出かけることになった。

 今度は都内のショッピングモールで
 映画と食事。
 待ち合わせも、会話も、前より自然で、
 「何を話そう」と構える隙もないくらい、
 話題はいくらでも出てきた。

 仕事のこと、学生時代の失敗談、
 好きな映画や、
 子どものころにハマっていた漫画の話。
 (なんでも話せるな……)

 気づけば、笑っている時間のほうが長い。
 仕事の愚痴も、どうでもいい話も、
 達也となら、なぜかちゃんと「楽しい」に
 変わっていく。

 胸が苦しくなるような緊張ではなく、
 会話の合間にふっと息が軽くなるような、
 柔らかくて、少し眩しい空気。

 ふざけて笑っている横顔が、
 不意に真面目な目つきになる瞬間があって、
 そのたびに、心のどこかが小さく跳ねる。
(……なんか、“青春”してるって感じ)

 そう思った途端、
 自分でも気づかないふりをしていた
 気持ちが、
 ゆっくりと輪郭を持ち始める。
 「同期の一人」だったはずの人が、
 少しずつ、それ以上の存在に滲んでいく――

 そんな変化を、
 遠くから眺めているようで、
 でも確かに胸の真ん中で
 起きているとわかる、
 不思議な感覚があった。
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