窓明かりの群れに揺れる
店に入って、
窓際の席に向かい合って座る。
メニューを挟んだテーブルの上で、
達也の手が、
ペンを弄ぶように水のグラスを回している。
「恵から誘われたの、
ちゃんと春奈に言ったのはさ」
運ばれてきた水に口をつける前に、
彼がぽつりと続けた。
「隠したくなかったからなんだよね。
“実はこっそり恵とも会ってました”
ってのは、
さすがにフェアじゃないと思って」
「……それ、ずるいです」
「え、なんで」
「そんなふうに言われたら、
余計に、嫌いになれないじゃないですか」
自分で言ってから、
頬がじわっと熱くなる。
達也は、一瞬きょとんとしたあと、
ふっと柔らかく笑った。
「それなら、よかった」
「よかった……?」
「“嫌いじゃない”ってことは、
まだ、チャンスはあるってことだよね」
冗談めかしながらも、
目だけは真っ直ぐだった。
その視線から、
逃げようと思えば逃げられる。
でも――逃げたくない、
と思ってしまった自分に気づいて、
春奈はそっと視線を落とした。
(……この人のこと、
ちゃんと見てみよう)
今目の前にいるのは、
同じ時間を、同じ会社で、
新人として並んで走っている人。
疲れているときに、
さりげなく声をかけてくれる人。
恵のことも、自分のことも、
正直に話してくれる人。
その誠実さに、
固く結んでいた気持ちの糸が、
少しずつほどけていくのを
感じていた。
窓際の席に向かい合って座る。
メニューを挟んだテーブルの上で、
達也の手が、
ペンを弄ぶように水のグラスを回している。
「恵から誘われたの、
ちゃんと春奈に言ったのはさ」
運ばれてきた水に口をつける前に、
彼がぽつりと続けた。
「隠したくなかったからなんだよね。
“実はこっそり恵とも会ってました”
ってのは、
さすがにフェアじゃないと思って」
「……それ、ずるいです」
「え、なんで」
「そんなふうに言われたら、
余計に、嫌いになれないじゃないですか」
自分で言ってから、
頬がじわっと熱くなる。
達也は、一瞬きょとんとしたあと、
ふっと柔らかく笑った。
「それなら、よかった」
「よかった……?」
「“嫌いじゃない”ってことは、
まだ、チャンスはあるってことだよね」
冗談めかしながらも、
目だけは真っ直ぐだった。
その視線から、
逃げようと思えば逃げられる。
でも――逃げたくない、
と思ってしまった自分に気づいて、
春奈はそっと視線を落とした。
(……この人のこと、
ちゃんと見てみよう)
今目の前にいるのは、
同じ時間を、同じ会社で、
新人として並んで走っている人。
疲れているときに、
さりげなく声をかけてくれる人。
恵のことも、自分のことも、
正直に話してくれる人。
その誠実さに、
固く結んでいた気持ちの糸が、
少しずつほどけていくのを
感じていた。