窓明かりの群れに揺れる
 その夜の出来事を、
 春奈は何も知らなかった。

 達也も、
 酔いがひどすぎて記憶は
 ところどころ途切れていて、
 思い出そうとしても、
 はっきりした線が引けないままだった。

 直樹だけが、
 噂話と朝の光景から事情を察して、
 一人で腹を立てていたが――
 それも日が経つにつれ、
 仕事の忙しさと新しい案件に紛れて、
 表向きは、いつもの日常が戻ってきた。
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