窓明かりの群れに揺れる

34.淡い未来予想図

 数カ月が過ぎたころ。

 忙しい時期を越え、
 大きなプロジェクトもひと段落して、
 オフィスには
 少しだけ落ち着いた空気が戻っていた。

 そのなかで――
 恵の様子だけが、じわじわ気になっていた。

 「恵、大丈夫ですか? 
  最近、ちょっとしんどそうに見えて」

 「え、そんなことないよ〜。寝不足なだけ」

 笑ってはいる。

 いつもの調子で、冗談も返ってくる。

 でも、目の下の薄い影や、
 ふと息を吸い直す癖が、
 「本当は無理してる」と
 静かに教えてくる。

 「無理しないでくださいね。
  ちゃんと休んでください」

 「なにそれ。春奈、
  最近ちょっとお母さんみたい」

 恵は軽く笑って流した。

 けれど、その翌日
 恵は会社を休んだ。

 「恵さん、体調不良でお休み」

 朝、リーダーの声が淡々と落ちて、
 春奈の胸に小さな不安が広がる。

 「……大丈夫かな」

 「最近、顔色よくなかったしな」

 直樹が眉を寄せる。

 達也も画面から目を離さないまま、
 低く言った。

 「……ちゃんと休めてればいいけど」
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