これはもはや事故です!
 すると、磯崎は「ふっ」と小さく息を漏らした。
 呆れたでも笑ったでもない、なんとも言えない柔らかい表情。

「……どうしてそんなに警戒してるんだ?」

「ど、どうしてって……!さっきの修羅場見ましたよ!?
 元カノさんたちが三角関係で争ってて……!それに、磯崎さんの……噂が……」

「噂?」

 不思議そうに磯崎が首をかしげる。

「……えっと、遊んでるとか……モテるから女に困らないとか……」

(しまった。いくら何でも言い過ぎた!)
 バツが悪くなった美羽は、視線を合わせられず、うつむく。

 磯崎はしばらく黙っていた。
 怒ったのかと美羽が思った瞬間。

「……そんな噂、信じてたんだ?」

 変にくすぐったい声。
 少しだけ低くて、笑ってるような、苦笑してるような。

「べ、別に……信じてたというか……!今日のあれ見たら、そう思いますよ!」

「……確かに。今日は最悪だったな」

 磯崎は自嘲気味に眉を下げた。

 その表情が、妙に美羽の胸に残る。

「でも、美羽さんが思ってるような女遊びはしてないよ」

「……っ」

「それに、君に何かするようなことは絶対にしない。嫌な思いも、怖い思いも、させない」

 真っ直ぐな声だった。
 嘘の色がひとつもない。

「だから……今日はベッドを使って」

 優しく促す声なのに、美羽はどうしても首を振ってしまう。

「む、むりです……!ソファで大丈夫ですから……!」

「美羽さん」

 名前を呼ばれた瞬間、息が止まる。
< 26 / 132 >

この作品をシェア

pagetop