これはもはや事故です!
 まだ痛む足首。
 見知らぬ部屋の静けさ。
 そして、どうしようもなく胸に残る、磯崎の面影。

(……早く戻ってきてくれないかな……)

 そんなひと言が、胸の奥でこっそり生まれる。店長との通話を切ったほんの数分後。
 スマホが震えた。

(えっ……誰だろ……?)

 画面を見ると「坂下真美」 の名前。
カフェ・ブリオンで働く同僚だ。

「……真美ちゃん?」

 通話ボタンを押すと、心配があふれた声が飛んできた。

『美羽!?ケガしたって聞いたよ!大丈夫なの!?』

「え、あ、うん……大丈夫……だよ……」

『店長から聞いてさ。
 なんか、弁護士の磯崎さんが連絡くれたって……』

「うん……」

『ねぇ、なんで、あの弁護士さんが美羽がケガしたって知ってるの?』

「それは……その……事情があって……」

 説明しようとするものの、うまく言葉が出ない。

 真美はため息をついた。

『美羽……。私が前に言ったよね?磯崎誠はモテるし、来るもの拒まずのタイプだから気をつけて、って』

「ちょっと!来るもの拒まずなんて言い方……!」

『じゃあ言い方変える?あの人、優しい顔してるけど、遊び散らかしてるってウワサなんだよ』

「そんなことないってば……!」

 つい声が強くなる。
 だって、美羽はもう、昨日から今日にかけて、磯崎の優しさを嫌というほど見せつけられていた。
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