これはもはや事故です!

タクシーの後部座席で

 街灯がタクシーの窓に流れ、磯崎の横顔を照らす。

 彫りの深い落ち着いた横顔。
 彼の目の奥はまだ怒りを宿していた。

「本当に悪かった。君が巻き込まれるなんて、あってはいけない」

「あれは……たまたま運が悪くって……」

「たまたま巻き込まれただけ……で、済ませたくないんだ」

「え……?」

「俺があの場にいながら、美羽さんに怪我をさせてしまった。その責任は俺にある」

 ゆっくりと、確信のこもった声で言う。

(……そんな……なんでそこまで……?)

 磯崎は話しを続ける。

「だから、治るまで……俺に任せてくれ」

「ま、任せ……?」

「怪我のこと、生活のこと、不安なこと。全部。君を一人にはしない」

 静かで、でも強い決意がこもった声だった。

(どうしよう……)

 そこまでして貰うような親しい間柄じゃない。なのに言い返せない。
 磯崎の声には、不思議と拒否できない美羽だった。

 タクシーは病院へ向かって走り続ける。

 美羽は痛む足を抱えながら、ただ胸の奥がじんわり熱くなるのを感じていた。
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