これはもはや事故です！
　タクシーの揺れが、時折、痛む足首にツキンと響く。
　美羽は窓の外を見つめながら、心の動揺をどうにか落ち着けようとしていた。

　隣では、磯崎がスマホで操作している。
　その指先はどこか焦り気味のように見えた。

「知り合いの病院に連絡した。すぐ診てもらえる」

　落ち着いた声なのに、ほんの僅かに震えているように感じられた。

（もしかして、心配してくれてる…？
　いやいや、そんなわけない。巻き込んだ責任ってだけだよね）

　美羽は、深く考えないようにしたまま、窓の外へ視線を移した。
　夜の街の光が後ろへ流れていく。
どこか現実感が無くて、まるでドラマの中に入り込んだような感覚だ。
それでも、痛む足首が現実だと伝えている。

　やがて、タクシーが病院のロータリーに滑り込んだ。
　磯崎はメーターを確認し、精算を済ませると、先にドアを開けて外へ降りた。

「着いたよ」

　磯崎が声をかけた直後、後部座席の奥から美羽が、痛む足を庇いながら、ゆっくりと外へ出ようとしていた。
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