夫のいない間に
 「健次! 追いかけて!」

  お風呂から出たばかりの息子に叫ぶように頼むも、

 「俺、今、風呂から出たんだって! それに勉強しないと検定落ちるし」

  薄情なのは息子も同じだった。

 「あ、ワンちゃん、大通りに走っていきましたよ。ここにサインか判子お願いします」

  宅配便屋さんが、申し訳なさそうに指差した。

 「理名、懐中電灯持って探して!」

  荷物を受け取りながら、今度は理名に訴える。

 「わかってるよ!」

  理名は靴を履いて、玄関を出た。
  理名の顔色は悪かった。
  どんなに邪険に扱っても、遊ばなくなっても、マキロンのことは心配だし、好きなのだろう。




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