夫のいない間に
 犬の鳴き声が聞こえ、そちらに走り向かうも、別の散歩中の犬だった。

 「理名? 今、どのへんにいるの?」

 娘に電話をかけると、もう一つの散歩コースである小学校近くにいるようだ。
 まだ見つからないと言う。

 「お母さんはもう少し探すから、理名は戻って」

 二十歳そこそこの若い娘を、暗い夜道に歩かせるのもどうかと思ったのだ。
 昔から、変質者は学校付近や通学路にて発見報告がある。

 いくら可愛気が無くなっても娘は大事だ。


 「マキロン!」

 コースを変えて、飼い犬の多い閑静な住宅街を探していると、

 「どうしました?」

 ちょっとしゃがれた声に呼び止められた。







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