夫のいない間に
 声の方を振り向いて、一瞬、固まった。

 「……こ、こんばんは」

 それは、息子の同級生の母親で、夫の浮気相手だった女性。

 大柄でグラマラスで、派手でキツイ香水。
 10年前とほぼ変わりない容姿だ。

 「確か、お子さん、うちの優と同じクラスでしたよね? 何かお探しですか?」


 相変わらずの酒ヤケしたような声。まだスナックにいるのだろうか。
 この人、この辺に住んでいたのか。

 「はい。飼っているコーギー犬が飛び出してしまって」

 人の縁って不思議だ。
 息子の義務教育が終わって、一度も見かける事が無かったのに。つい、この前、この人のことを思い出した途端に会ってしまうなんて。



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