夫のいない間に
 それは、恋愛を経験した者なら誰でも分かる空気感だ。

  『あの頃、吉岡さんは、A支店の伊吹課長と付き合ってましたよね? 』

 井戸端さんが言っていたように、気付かれていないと思ってるのは本人達だけ。


 夫とあの人が何年付き合ってたのか、本気だったのか、それともただの浮気だったのか――そこには関心は持たなかった。

 夫が私に無関心なのと同じ。

 子供達だけが、二人を繋ぐ糸だった。

 その時点で、私と夫との関係は破綻していたのかもしれない。

 今は、その糸も切れかけてしまっている。


 「マキロンちゃん見つからなかったです。もしかしたら、雨のせいでマーキングの匂いが消えて迷子になってるんじゃないですかね」



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