夫のいない間に
 鍋をかき混ぜる私の動きが止まった。

 「……探すって、旅行なのに?」

 「ただの旅行なわけないじゃん、旅行なら、じゃあどこに行ったのよ? 行き先も告げずに旅に出るなんて、家出同然じゃないの!」


  娘は、普段、そんなに夫とは口をきかない。

 「……お父さんが家出する理由なんてある?」

 それでも本音は心配だったようで、平静を装いつつお皿に料理を盛る私を憎々しい目で見ていた。


 「お父さんは気が付いてたんだよ」

 「何を?」

 「お母さん、他に好きな人いたでしょ?」






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