すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 無事にパイロットになってからも、雄大さんとのつながりは続いていた。頻繁にとはいかないが、なにかの折にふと連絡をすると、彼は快く食事に連れて行ってくれた。

「あの小さかった拓真君と、一緒に酒が飲める日が来るとはな」

 グラスを手にした雄大さんが、楽しそうに笑う。
 お互いに飛行機好きなのもあり、彼とはすぐに気の置けない仲になっていた。雄大さんは、俺をまるで本当の息子のようにかわいがってくれた。

 その彼が病に倒れたと聞いたとき、真っ先に浮かんだのが幼い悠里のことだった。

 雄大さん病気をきっかけに再会した悠里は、彼がいつも自慢していた通り優しげで綺麗な女性に成長していた。
 儚げでありながら意志の強さを感じさせる瞳は、幼くして母親を亡くし、自分が父親を支えなければと早く大人になろうともがいた結果なのかもしれない。

 そんな彼女を見ていると、漠然と胸がざわつく。

 雄大さんを介して悠里とさらに関わるようになり、つい目で彼女を追ってしまう。
 仕事に父親の世話に、彼女はなにひとつ手を抜かずに自分ひとりでがんばろうとする。その結果が、初対面のときの体調不良だ。

 彼女を放っておけない。
 父親とはよい関係でいるようだが、もう幼い頃のように甘えられはしないのは当然。

 では限界までひとりでがんばってしまう彼女を、誰が安心して甘やかしてやるのか。

 交際相手がいないのは、雄大さんの暴露でわかっている。ほかに身近な存在は、まったく話題に出てこない。
 気丈に振る舞いながら、時折見せる不安げな彼女の表情に胸をしめつけられる。
 雄大さんのいない自宅でひとりになったときの彼女を想像すると、居てもたってもいられなくなる。
 
 俺が守ってやりたい。

 自然とそう思うのは、自分が悠里に惹かれ始めているからだとわかっている。
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