すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 隣に体を横たえた彼が、胸もとに私を抱き寄せる。私からも身を寄せ、ふたりの間にわずかでも隙間を作らない。

 呼吸が整うのを待つように、彼が優しく頭をなでてくれる。
 それが心地よくてぼんやりとしていたところで、「悠里」と呼ばれて顔を上げた。

「本当は今日、食事をして君に渡したいものがあったんだ」

 ぱちぱちと瞬きを繰り返す。それはおそらく、以前から彼が言っていたものだろうか。

「ちょっと待っていて」

 額に口づけた拓真さんが、ガウンを羽織って部屋を出ていく。このままでいるのは気まずくて、私も気怠い体をなんとか起こして彼とそろいのガウンを羽織った。

 しばらくして戻ってきた彼は、手に小さな箱を持っていた。もしかしてと、その見た目から中身の想像がついて胸が高鳴る。

 ベッドに座る私の前に来た拓真さんが、膝をついて視線を合わせてくる。
 ゆっくりとした動作で箱を開けて、私の方へ差し出してきた。

「悠里。俺と、結婚してほしい」

 キラリと輝く指輪に、涙が込み上げてくる。

 再会したあの日。彼はすでに私に渡したいものがあると言っていた。
 もしかしてこの指輪は、アメリカに渡った頃から用意してくれていたのだろうか。拓真さんは最初からずっと、私との結婚を考えてくれていたのかもしれない。

 一気に感情が込み上げて上手くしゃべれない私に、拓真さんが眉を下げる。
 どこか不安そうな彼に、心からの笑みを向けた。

「はい」

 愛する人が自分を好きになってくれて、なによりも大切な子どもにも恵まれた。
 手放したはずの幸せがこうして自分の手の中にあるのは、拓真さんが私をずっと想い続けてくれたから。

 そっと私の左手を取り、薬指に指輪をはめてくれた。

 手を目の高さに掲げて、じっと見つめる。

 もう二度と、拓真さんから離れない。そんな誓いを込めて、指輪にそっと口づけた。



END
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