すべてを失ったはずが、一途なパイロットに秘密のベビーごと底なしの愛で囲い込まれました
 宮野さんに教えつつ仕事をこなしていると、少しは寂しさを忘れていられた。

 そうして定時を迎えて、帰宅の準備をしていたときのこと。叔父が「宮野君は大丈夫そうか?」と声をかけてきた。

「経験もあるので、あとはうちのやり方さえ覚えてしまえば大丈夫だと思いますよ」

「そうか。それならすぐにでも仕事を振って問題ないな」

「先輩が教えてくれたおかげですって。だから川島先輩。心配しないで、私に任せてくださいね!」

「え、ええ」

 まただ。なんだかこのふたりと話していると、私をいらないもののように扱われている気がしてならない。

「じゃあ、お疲れさまでした。私、用があるのでお先に失礼しますね」

 事務所を出ていく宮野さんを見送る。

「そうだ、悠里ちゃん。明日なんだが、家の片づけ業者を手配しておいたから」

「え?」

 なんの話か分からず、首をかしげる。

「ほら。あの家も、悠里ちゃんひとりで暮らすには広すぎるだろ?」

「そうですけど。でも、片づけって……?」

「あそこは、私と兄さんの両親が暮らしていた家なのは知っているね?」

「え、ええ」

 叔父は進学時に出て以来ひとり暮らしをし、結婚してからは購入したマンションで暮らしている。

 私の両親が結婚した頃にはまだ祖父母は健在で、一時的に同居をしていたと聞く。祖父母が亡くなった後も、私たちはあの家に住み続けてきた。

「建物については兄さんに権利があったが、土地の一部は私も相続しているんだ」

 細かな話を、私はまったく把握していない。後に揉めるような状態になっていたなんて、今聞かされるまで知らなかった。
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