離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 惺久はなんて答えたら良いかわからず、ただじっと冬実の話を聞いていた。


「今は大人ですから、きっと立派にやっていると思います。許されるならあの子に――リッカに会いたいけれど、それは無理ですから」


 娘の名前はリッカというらしい。


「その後にあの人と知り合って、最初は上手くやっていたけど段々暴力を振るわれるようになりました。辛かったけれど、これは娘を捨てた因果応報なのだと思っていました。私に助けを乞う資格などないと思っていたけれど、永瀬先生は助けてくださいました。本当にありがとうございます」


 冬実は深々と頭を下げた。
 惺久は「当然のことをしたまでですよ」と答えた。

 当時はそんなことがあったのかくらいにしか思っていなかったが、冬実は六花の実母だったのではないだろうか。
 思い返してみると、二人は顔が似ているような気もする。

 さりげなく母親のことを訊ねてみると、六花は十二年間一度も会っていないと答えた。
 会いたいとも思っていない、とも。


(まあ、それは当然だろうな……)


 偶然にも母親の居場所を知っていたが、惺久はそれを六花に話すべきかは迷っていた。
 六花の気持ちを尊重したいとは思うが、このまま会わないままで本当に良いのだろうか。

 六花にとっては唯一の肉親なのだ。
 たった一人の母親と亀裂ができたままだというのは、何とも寂しい。


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