離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
* * *
惺久と想いが通じ合い、蜜月の甘さに浸っていた数日後。
六花と惺久はとある個室の和食レストランを訪れていた。二人の目の前に座る冬実と話すためだ。
俯きながら座る母は、とても小さく見えた。
六花自ら冬実と話をしたいと申し出て、惺久を通してこの時間を設けてもらった。
(正直お母さんのことは許せないけど、向き合わないと私も前に進めない)
しかし、先程からずっと沈黙が続いている。
「何を飲まれますか」
場を和ますように惺久が冬実にメニューを渡す。
遠慮がちにメニューを受け取った冬実は梅昆布茶を注文した。
「……梅昆布茶、相変わらず好きなんだね」
六花はポツリと呟く。
「昔から好きだったよね」
「覚えていてくれたの?」
冬実は目を丸くする。
「ええ、だって家に常備してあったじゃない」
「そうなの。今もこれを飲むと落ち着くのよ」
冬実の表情がいくらか和らいだ。
惺久と六花はほうじ茶を注文し、料理も数品頼んだ。
食事に手を付ける前に、冬実が深々と頭を下げる。
「六花、本当にごめんなさい」
頭を向けた冬実の頭髪に白髪が少し混じっているのが見えた。
「謝っても許されないことをしたと思ってる。許して欲しいなんて思っていない。でも、ずっと謝りたかったの……」
そう言って冬実はハンカチに目を当てながら涙ぐむ。