離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


「……どうして、お父さんの葬儀に来なかったの?」


 母に言いたいことは山ほどある。
 ぶつけたい気持ちもたくさんある。

 だけどそれらをすべて飲み込んで、一番聞きたいことがそれだった。


「ごめんなさい、何も知らなかったんです」


 冬実は涙声で答えた。


「離婚届を置いて、そのまま大阪へ行ったの。離れたところに行きたくて、三年くらい大阪で過ごした。……まさか、亡くなっていたなんて思わなかった……っ」


 嗚咽を漏らしながら泣きじゃくる冬実のことを、六花はとても冷静に見つめていた。

 一人で勝手に出て行って遠くへ行って、帰って来たら元夫が亡くなっていた。
 それを知った時、どんな気持ちだったのだろう。


「あなたのことを探したの。でも親戚中に聞いて回っても誰も知らないし、教えてくれなかった。当然よね、私は家族を捨てた女なんだもの……」
「……」
「ごめんなさい、六花……本当に、ごめんなさい……っ!」


 何度も謝りながら号泣する冬実に対し、六花は冷ややかに言った。


「お父さんが亡くなって、親戚はみんな私を引き取るのを嫌がった。はっきり言葉にしないけど、みんな押し付け合ってた。でもね、涼風さんだけは違ったの」


 借金まみれの厄介な娘と煙に巻く中、唯一宏海だけは六花に同情し気遣ってくれた。
 赤の他人だったにも関わらず、昔貴雪の世話になったという恩義だけで六花を迎え入れてくれた。


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