離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
先の見えない真っ暗闇の中で茨の道を歩むしかないと思っていたが、涼風家が救ってくれたのだ。
「旦那様と奥様が良くしてくださったから、今まで生きてこれた。夏芭がいてくれたから毎日が楽しかった。前を向いて頑張ろうって思えたの」
いつの間にか六花の頬には涙を伝っていた。
「こんなこと思うのは、烏滸がましいかもしれないけどっ、私の家族は涼風家だけだった……っ。今は、惺久さんがいる。あなたじゃないの」
冬実も辛かったのだと思う。
腕は良いが、楽天家でお人好しすぎる貴雪に手を焼いていた。
貴雪に対し、小言を言っている姿は何度も見てきた。
あれでも六花の前では我慢していたのだと思う。
本当は、何もかも放り投げてしまいたいと思う程に追い詰められていたのに気づいてあげられなかった。
けれど、それでも傍にいて欲しかった。
一番に傍にいて欲しかった人だった。
「……ごめんなさい、本当にごめんなさい」
何度も何度も、冬実は涙を流しながら謝り続けた。
「結婚式、六月にやるの」
六花は涙を拭いながら言った。
「ベールダウンは奥様にお願いしているし、旦那様には一緒にヴァージンロードを歩いてもらうの。あなたのすることは何もないけれど、遠目に見るくらいなら構わない」
「……行ってもいいの?」
冬実はハンカチで押さえたまま顔を上げた。
「一応、場所を教えておこうと思っただけよ……」