離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
その言葉だけで、温かい気持ちになれる。
棘だらけになった六花の心を柔らかく包み込んでくれる。
六花も惺久の手を握り返した。
「そう言えば、夏芭さんには何かしてもらわないのか? 当日のヘアメイク以外に」
「夏芭にはブーケをあげるつもりです。それとこれはサプライズだけど、お色直し前のエスコートを夏芭にお願いしようと思ってます」
「それはいいな」
思えば、惺久と出会ったあのマスカレードパーティーに行ったのは夏芭がきっかけだった。
キャンセル料五万円を払いたくないから代わりに行ってくれと頼まれたら、実際は最初から六花に行かせるつもりだったと言っていた。
「一応聞きますけど、夏芭とは本当に知り合いじゃなかったんですよね?」
「当たり前じゃないか。話したことがすべてだよ」
惺久は心外だと言わんばかりだった。
「あ、ごめんなさい。疑っているわけじゃなくて、私の運命の人って夏芭だったんだなぁって思ったんです」
夏芭があの招待状を渡してくれなかったら、惺久とこうして出会うことなんてなかった。
もはや遠い過去の記憶となっていた初恋の人と再会するなんて、あり得なかったのだ。
「……そこは、俺が運命の人じゃないのか」
「あはは、確かにそうですよね」
「まだまだ夏芭さんには敵いそうにないな」