離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 やれやれと肩をすくめた後、惺久は六花の頬に口付けを落とす。


「ちょっと惺久さん! 外ですよ!」
「夏芭さんに負けっぱなしは嫌だからな。もっと愛を伝えていこうと思う」
「も、もうっ」


 既に充分すぎる程の愛情を注いでもらっていると思っているのに、と頬を染める。

 今までは期限付きの契約結婚だったから、一年後に離婚するのだと思うと悲しくて切なくて仕方なかった。
 惺久はあまりにも自分とは生きる世界の違う人で、別れたらこの先二度と会うことのない人だと思っていた。

 まさか初恋の“ハルさん”だったと知った時は、こんな巡り合わせはほぼ奇跡に近いんじゃないかと思った。

 本当の夫婦となった今、新たな不安がある。
 自分なんかに惺久の妻が務まるのかな、と考えて憂鬱になる時がある。

 でも、惺久はいつでもありのままの六花を受け止めて包み込んでくれる。

 だから頑張ってみよう、冬実とも会って話してみようと思えたのだ。


「惺久さん、私も精一杯惺久さんのこと幸せにしますね」


 お互いに支え合って素敵な家庭を築いていきたいと思った。
 その未来を望めることが、心から幸せだ。


「もう充分幸せだけどな」


 そう言って微笑む惺久の腕にぎゅっとしがみついた。


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