離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 コンコンとドアをノックする音が聞こえた。


「六花、入ってもいいか?」
「惺久さん」
「あ、じゃあ私は一旦失礼しようかな〜」


 夏芭はそう言って自分の荷物を片付け始めた。


「惺久さん、メロメロになって何するかわからないし」
「ちょっとやめてよ」


 夏芭はニヤニヤしながら扉を開けた。
 目の前には白いタキシード姿で髪も綺麗にセットした惺久が立っていた。


「夏芭さん、六花は終わりましたか?」
「終わってます! あんまり綺麗だからってりっちゃんのこと食べたらダメですよ?」
「夏芭ったら!」
「じゃあ、ごゆっくり〜」


 最後までニヤニヤしたまま夏芭は去っていった。全くもう、と肩を竦める。

 夏芭と入れ替わりに控え室へ入ってきた惺久を見て、思わず「かっこいい……」と声が漏れていた。
 試着する時にも一度見ているが、あの時とは輝きが違う。

 俳優かと見紛う美しさの惺久に見惚れてしまう。


「惺久さん、素敵ですね」
「……」


 惺久はじっと六花を見つめたまま固まっている。
 穴が開くかと思う程凝視するのに黙っているので、六花は気恥かしくなって俯いた。


「何か言ってください……」
「……あ、いや、すまない」


 手で口元を隠す惺久の頬は僅かに赤い。


「想像はしていたが、想像の何十倍も綺麗で……言葉を失ってしまった」
「えっと……ありがとうございます」


< 114 / 115 >

この作品をシェア

pagetop