離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
惺久につられて六花も赤面する。
もし夏芭がこの場にいたら、「そうでしょう!」と誇らしげに胸を張っていたかもしれない。
「天気は残念でしたね」
「ゲストには申し訳ないが、俺はどちらでも良かった。こんなに綺麗な六花が見れるんだからな」
惺久は優しく目を細める。
「六花、ありがとう。俺の妻になってくれて」
「それは……私の方こそありがとうございます」
せっかく夏芭が綺麗にしてくれたのに、思わず涙が溢れそうになる。
溢れる前に拭わないと、と思っていたら惺久がそっとハンカチを差し出してくれた。
「ありがとうございます」
いくら泣いても大丈夫なように! と夏芭がアイメイクはしっかりウォータープルーフにしてくれた。
それにしても始まってもいないのに泣くのは早すぎる。
「私、昔は全然泣かなかったんです。父が亡くなって以降はほとんど泣いたことありませんでした。でも、惺久さんの前だとダメですね」
「いくらでも泣いていい」
惺久は包み込むように六花を抱きしめる。
「但し、俺の前だけにしてくれ」
「もちろんですよ」
そっと抱きしめ返すと、瞼に軽くキスが落とされる。
これから結婚式が始まるというのに、二人だけの世界に浸ってしまう。
そろそろ行かなければ、と思うのに離れ難い。
「俺だけの六花なのに独占できないのが悔しいな。今からでも結婚式は中止にするか」
「何言ってるんですか!?」
「冗談だよ」
冗談だと言っている割に目は本気に見えた。
「もう、惺久さんったら」
だけどそんなところも愛おしく思えてしまう。
これから先も彼の隣で笑ったり泣いたり、楽しい未来を歩んでいけるのだと思うと、六花の胸は幸福感で満たされた。
fin.


