離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 *


「はあ……」


 パーティー開始から一時間後、六花は会場の隅っこで一人ワインを飲んでいた。
 ジャズミュージックの生演奏と共に参加者がダンスする光景をぼんやりと眺めながら。


(やっぱり私なんか場違いだった……)


 まず驚いたのは、参加者が自然と英語で会話していることだ。
 外国人も多数参加しており、英語が当たり前だった。

 それだけでこちらから話しかけるハードルが高くなるし、話しかけられても英語がわからないので会話ができない。
 もちろん日本人もいるし、日本語で会話する声も聞こえるのだが初っ端から住む世界が違うのだと突き付けられた気分だった。

 どんなに綺麗に着飾っても、自分がいるべき世界ではないのだと思い知らされた。
 高卒で学がないことを見抜かれたら、と思うと怖くて誰にも話しかけられない。


(夏芭はゆくゆくはアメリカへ留学したいと言ってるし、英語は堪能だ。それに比べて私は……)


 借金を背負うことになったせいで、大学に行けなかったなどとは思いたくない。
 貴雪のことを恨んだことなどない。自分と父を捨てた母のことも、今更とやかく言うつもりはない。

 だけど時折思ってしまう、自分はなんて惨めなのだろうと。

 涼風夏芭として美しく着飾っても、中身はハリボテの自分でしかない。
 どう頑張っても夏芭にはなれないのだ。


< 16 / 115 >

この作品をシェア

pagetop