離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 恥ずかしすぎて顔を真っ赤にする六花に対し、男性は淡々としていた。


「裸足で歩かせるわけにはいきません」
「でも……っ!」
「大丈夫です」


 どんなに見られていても彼は堂々とした態度を崩さなかった。
 横抱きされたまま会場から出て、六花が下ろされたのは会場を出た外にあるソファだった。


「いた……っ」


 足首が真っ赤に腫れ上がっている。
 慣れない高いヒールでそもそも足が疲れていた上に挫いてしまい、最悪な状況となってしまっていた。


「これは……大変申し訳ございません」


 男性は深々と頭を下げた。


「知り合いの医師がいます。今すぐ病院に行きましょう」
「や、でも……」
「タクシーを呼びます」
「待ってください!」


 なかなかに強引な人で六花は焦りながら呼び止める。


「見た目程酷くないと思います。少し休めば大丈夫です。靴はクロークに預けてあるのがありますから……」
「そうですか。では僕が代わりに荷物を受け取ります。ここで休んでいてください」
「ありがとうございます」


 言葉に甘えてクロークの番号札を手渡した。
 一分とかからずに彼は戻ってきて、六花の荷物を持って来てくれた。

 ペタンコ靴に履き替えると幾分は楽だが、やはりまだ痛い。


「この後お時間はありますか?」
「え? はい」
「このパーティーに参加者だけが無料で使えるラウンジがあるんです。そこで少し休みませんか?」
「あ、そうですね」


 ラウンジはホテルの三十二階にある。仮面を付けている者であれば、無料でお酒を楽しむことができる。
 男性に手を貸してもらいながらエレベーターで上がったラウンジには、仮面を付けた人たちが数組程いた。


「さあ、どうぞ」
「ありがとうございます」


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