離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
凪子の言う通りだ。彼の面子を潰すことにもなりかねない。
夕食後、夏芭の部屋で二人は頭を抱えた。
「どうしよう! 断りにくいよ!」
「ごめん、私のせいだ……」
「いやパーティーに行かせたのは私だし。それにパパとママ、本音は結婚して欲しそうな気がした」
夏芭は思案顔になる。
「だって相手は六条財閥会長の孫で永瀬法律事務所代表の息子でエリートだよ?」
確かに改めて肩書きを見ると、かなりすごい。
いくら本人の意思を尊重すると言っても、Suzukaze.incとは比べ物にならない家柄の相手だ。
ここで断ったら外聞は最悪だろう。
「でも夏芭は結婚する気ないよね?」
「ない。欧米のガッシリしたグッドルッキングガイと国際結婚するって決めてるから」
「そうだよね」
何故こんなことになってしまったのかわからないが、この火種を撒いてしまったのは自分だ。
六花は腹を括った。
「私が直接会って謝罪する」
「大丈夫なの?」
「誠心誠意謝罪すればわかってもらえるかもしれない」
下手に誤魔化そうとせず、本当のことを打ち明けて謝罪することが一番穏便に済ませられると思った。
きっと彼が結婚を申し込んだのは、相手がSuzukaze.incの令嬢だと思っているからだろう。
実際はただの家政婦だと知ったら身を引いてくれるかもしれない。
怒らせることになるかもしれないが、騙すようなことをしてしまったのだから当然だと思った。