離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
*
ついに惺久と再び会う日が訪れた。
待ち合わせ場所として指定されたのは、マスカレードパーティー会場となったホテルのロビーだった。
まさかまたこのホテルに訪れるとは思わなかった。
ロビーのソファに夏芭と並んで座り、静かに惺久を待つ。
先程から六花の手には手汗が滲んでいた。
「はあ……」
「ちょっとりっちゃん、大丈夫?」
「ごめん、緊張してて」
ホテルに入る人を見る度に惺久かと思って、心臓がバクバクと高鳴る。
その時、カツカツという革靴の音が真っ直ぐこちらに向かってきた。
ダークネイビーのスーツを着た背の高い男性だった。
綺麗にセットされた黒髪、凛々しく整えられた眉、涼やかで精悍な目つき。
思わずその場にいる人が振り返って彼に見惚れるくらい、端正な顔立ちの男性だった。
(まさか、あの人が永瀬さん……?)
「本日はご足労いただきありがとうございます。永瀬惺久です」
咄嗟にソファから立ち上がったが、あまりの美しさに言葉が出ない。
惺久は六花と夏芭を見比べながら、やや戸惑ったように訊ねた。
「すみません、涼風夏芭さんは……」
「私が夏芭です」
夏芭がスッと片手を挙げて答える。
「ただ、あなたとお会いしたのは今日が初めてです」
「え……?」
「あの日パーティーに来ていたのは、私です」