離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
おずおずと答えると、惺久はパッと両手を離して六花を解放した。
「……失礼しました。今のは、忘れてください」
「は、はあ……」
惺久はコホンと小さく咳払いした。
「ここで話すのは難ですから、よろしければあちらのカフェで話しませんか。夏芭さんもご一緒に」
「はい」
「わかりました」
言われるがまま、三人でホテル内に入っているカフェに入った。
宿泊客でなくても利用できるカフェだ。
四人がけのテーブル席で六花と夏芭は隣同士で座り、その向かい側に惺久が座った。
「何を飲まれますか」
「えっと、コーヒーで」
「私もコーヒーでお願いします」
「はい。ホットコーヒーを三つお願いします」
数分後にホットコーヒーが運ばれてきたところで、惺久が徐に話し始める。
「俺はあの日以来ずっと涼風さんを探していました。まさか別人だったとは」
「すみませんでした……」
「いえ、結果的に会えたのだから良かったです。糸井六花さん、単刀直入に言います。俺と結婚していただけませんか」
隣に座る夏芭の「ひゃあ」という声が聞こえた。
六花の心臓がドクンと大きく脈打つ。言葉を飲み込むまでに数秒かかった。
「あの、私は……」
「一時的に俺の妻になって欲しい」
「とてもじゃないですがあなたの妻なんて……え、一時的に?」