離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 一年だけ結婚して離婚する。
 正に期限付きの結婚というわけだ。

 戸惑う六花に代わり、夏芭がズバッと訊ねた。


「どうしてりっちゃ……六花さんなんですか?」
「どうして、とは?」
「あなたなら引くて数多なんじゃないですか? わざわざ母に直談判しに行くなんて。何を考えてらっしゃるのですか?」
「ちょっと夏芭! 失礼でしょ!」


 あまりに直球すぎる夏芭に六花は慌てる。
 しかし夏芭はじっと惺久から視線を逸らさない。


「そう思われても仕方ないですね。糸井さんに会いたかったのは、これを渡したかったからなんです」


 そう言って惺久は大きな紙袋を取り出した。
 中に入っている箱を開けると、淡いピンクゴールドにラメが散りばめられたレザーのパンプスが入っていた。


「これ、ラブタンの新作! しかもクリスマス限定モデル!」


 夏芭が声をあげる。


「修理代の代わりです。あの時は申し訳なかった」
「いえ! 私の方こそホテル代を払わずに申し訳ございませんでした」
「あれは六条グループのホテルなので気になさらないでください。ほとんど身内サービスなので」
「そ、そうですか」


 改めて惺久の後ろにある六条財閥の大きさを感じて気後れした。
 何もかも自分とは、住む世界が違いすぎる。

 そんな人の一時的とは言え妻役なんて務まるのだろうか。


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