離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
「この靴を渡して、あわよくば妻役になってもらえないか……と思っていました。しかしどうしてもあなたを探し出せなくて、涼風社長に直談判するという強引な手段を取ってしまいました」
「そうだったのですね」
改めて律儀な人だと思った。
あれは六花の不注意でもあったのに、わざわざ新しい靴を用意してくれていたなんて。
「まさか別人だとは思いませんでした。どうりで探さなかったはずだ」
「本当にすみませんでした。それと、あの靴は夏芭のものなんです。だから私は受け取れません」
「え、なんで? もらいなよ」
夏芭は信じられないとばかりに六花を見る。
「このクリスマス限定モデル、即完売した人気商品なんだよ。もらわないと損だって」
「だったら夏芭がもらうべきよ。夏芭の靴を壊してしまったんだもの」
「でも永瀬さんは、りっちゃんのために選んだんですよね?」
「まあ……そうですね」
惺久は少し居心地の悪そうな、何とも言えない表情を浮かべていた。
「りっちゃんのために選んだ靴を私がもらうのは違うでしょ」
「でも、」
「いーから! ねっ!」
元々貸してもらった靴も六花がもらうことになってしまったのに、その上で新しい靴までもらうのは良いのだろうか。
もらいすぎではないかと思ったが、このままでは話が堂々巡りになりそうだったので有難く受け取ることにした。