離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
六花はかろうじて惺久さんと呼ぶのが精一杯で、敬語は外せない。
まだ六花と呼ばれることにも慣れずにいる。
「あの、今更ですが本当に私で大丈夫なんでしょうか。その、おじいさまに認めていただけるのか……」
「それは問題ない。むしろ君のことを気に入ると思うよ」
「そうでしょうか」
「六花は健康的に見える」
「まあそうですね。子どもの頃から大きな病気どころか、風邪もほとんど引いたことないです」
「祖父は常々健康的で働き者の女性を妻にしろ、と言っているんだ。六花は正に理想そのものだよ」
「でも、私は高卒ですし……」
「学歴なんて関係ないよ」
惺久はそう言ってくれるが、六花の不安は拭えない。
貧乏家政婦だった自分が立派な弁護士である惺久の隣に並び立って大丈夫なのだろうか。
同じ悩みをぐるぐる考えてしまう。
「俺は六花のことを立派に思う。たった一人で懸命に働いて、周囲の人のことも大切にしているじゃないか。夏芭さんとの関係には驚いたな」
「どういう意味ですか?」
「とてもお嬢様と家政婦の関係には見えなかった。仲の良い姉妹のようなんだな」
「夏芭がいい子なんですよ。妹みたいに思うのは、恐れ多いくらいには」
「夏芭さんは喜びそうだが」
そう言って惺久はコーヒーを一口飲む。
「とにかく、君は何も心配しなくていい。これからのことを相談しよう」
「はい」