離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
唯一手を差し伸べてくれたのが涼風宏海だった。
涼風家に招き入れ、家政婦として雇ってくれた。
凪子も夏芭も本当の家族のように接してくれた。
涼風家には大恩があるからこそ、借金のことは自分一人でどうにかしないといけないと思っていた。
誰にも頼ってはいけないのだと思っていた。
「君は一人で抱えすぎだ。もっと周りの人を頼っていい」
「はい……」
「これからは何かあれば俺に頼ってくれ。夫婦になるんだから」
夫婦、という言葉にとくんと胸が鳴る。
改めてこの人と結婚するのだ、ということを実感させられる。
それと同時に何だか懐かしい気持ちになった。
何故だろう、前にも似たようなことがあったような気がする。
(もしかして惺久さんと以前会ったことがある? いやまさかね……)
あのマスカレードパーティーの出会いがそもそもイレギュラーだったのだ。
だけど弁護士として相談していたら、もしかしたら会う機会があったのかもしれないと思った。
「さて、他にも相談しておかなければいけないことは沢山ある。今のうちに詰めるところは詰めてしまおう」
「そうですね」
六花は頭を切り替え、期限付きの結婚に向けて必要なタスクについて相談の続きを行う。
まだまだ不安なこともあるが、相手が惺久で良かったと密かに思っていた。