離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 顔をしわくちゃにして笑う貴雪の頬には涙が伝っていた。
 六花は父に抱きつき、大声で泣き続けた。

 六花が十八の時に貴雪はこの世を去った。
 余命半年と宣告されてから二年生きた。医師にはよく頑張ったと言われた。

 それでも大好きな父を失った喪失感は大きかった。
 母の行方はわからず、頼れる親族もいない。

 生前父はこう言っていた。


「僕が間抜けなばかりに六花には何も残してやれない。でも借金は相続放棄すれば支払わなくていい。どうせ残してやれるものなんてないんだ、相続放棄するんだよ」


 そう言われた後に相続放棄について調べた。
 簡単に言えば故人の財産相続を放棄するということだ。財産が受け取れなくなるが、借金を背負う必要もなくなる。

 だがその場合、実質借金を踏み倒すことになる。
 果たしてそれで良いのか? と悩んだが、数百万円もの借金を十代の六花が支払えるはずもない。

 苦渋の決断だったが、相続放棄することにした。
 債権者は泣き寝入りすることになると思うと、心苦しかった。

 しかし、思わぬ落とし穴があった。
 あるファイナンシャルプランナーが貴雪の葬儀に参列した。
 貴雪には死亡保険があり、その受取人が六花だという。
 何も残さないと言っていたのに、実際は五百万円という額を六花に残してくれていた。

 六花は手続きを行い、有難く保険金は受け取った。
 だがこれが大きな落とし穴だった。


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