離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。
凪子は六花の左手の薬指に嵌められた指輪に気づくと、目を細めた。
「素敵な指輪ね」
「あ、はい。惺久さんが買ってくださいました」
「六花ちゃんが嫁入りして嬉しいけど寂しいわ。だから申し訳ないけど、また来てくれて嬉しいの」
「私の方こそありがとうございます」
これは言えないが、夏芭からハウスキーパーを雇おうとしていると聞いた時、寂しい気持ちになった。
結婚して涼風家を出ることになり、その上新しいハウスキーパーが来てしまったら自分の居場所がなくなってしまうように感じてしまったのだ。
涼風家との関係が途絶えてしまうのは嫌だった。
「以前は六条財閥の親戚になるのに家政婦なんて、と言ってしまったけれど、六花ちゃんの家事能力はプロ並だと思うのよね」
「そうでしょうか」
「料理はなんでも美味しいし、掃除洗濯も完璧。大事な取引先との会議に合わせて、勝負スーツをアイロンがけしてくれる家政婦なんていないわよ」
「皆さんのスケジュールは大体把握していたので」
「それがすごいの。六花ちゃんの家事能力はどこでも活かせると思うわ。借金もなくなるんだし、考えてみてもいいんじゃないかしら」
惺久が代理人として入ってくれることになってから、六花は一円も振り込んでいない。
惺久が金融社宛に内容証明書を送り、六花に対する連絡先窓口は惺久になった。
そこから惺久がどのように動いてくれているか詳しくはわからないが、警察も動くことになるかもしれないらしい。
なんだか大事になっているが、必ず金は取り戻すと力強く言ってくれたので安心して任せている。