離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 借金は払わなくて良くなったが、十年もの習慣は抜けず節約する生活は変わらない。
 生活費はここから好きに使ってくれと惺久からカードを渡されたが、必要最低限のみしか使っていない。

 惺久には「残高が減っていなさすぎる」と逆に心配された程だ。
 どうにも自分は元から貧乏性らしく、家事以外にやりたいこともなかった。


(そんな自分が貧乏くさくてコンプレックスに思っていたけど、誰かの役に立てるのかな)


 その時六花の中に一筋の光が差したような気がした。


 *


「ただいま」
「おかえりなさい」


 今日は惺久の帰宅が比較的早かった。
 六花はキッチンでローストビーフを焼いていた。


「ローストビーフか。美味そうだな」
「奥様からいただきました。良いお肉をいただいたから食べて欲しいって」
「それは有難い。着替えてくるから手伝うよ」
「あ、大丈夫です。惺久さん、お疲れでしょう?」
「それは君もだろう。それに家事を六花だけにやらせるつもりはない、俺も手伝う」


 そう言って惺久はスーツから着替えたかと思うと、エプロン姿で戻ってきた。
 腕まくりをしながらキッチンに入る。


「さて、何をすればいい?」
「本当にいいんですか?」
「一人暮らしが長いから料理はそこそこできる」
「では野菜スープを作ろうと思っていたんです」
「野菜を切ればいいんだな、わかった」
「ありがとうございます」


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