離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 六花は慌てて火を止め、救急箱を取りに行く。
 ガーゼを指に当て、軽く止血してから絆創膏を巻いた。


「これで大丈夫です」
「……」
「見たところ傷は浅く見えたのですぐに塞がると思いますが、もし化膿するようならこの軟膏を……惺久さん?」


 惺久は何故か固まってじっと六花を見つめていた。
 その時、ついお節介をしてしまったかと気づいて恥ずかしくなった。


「すみません! 私ったら、つい夏芭にやっているようなことを……」
「いや、すまない、ありがとう。あまりにも手際が良かったから」
「父の工房を手伝っている時に指を切るなんてよくあることでしたし、夏芭にやってあげることもあったからその感じで……」
「……変わらないんだな」
「え?」


 恥ずかしくて思わず惺久から逸らしてしまった視線を戻すと、とろけるような優しい視線を向ける惺久の笑顔があった。

 びっくりしたと同時に先程以上に顔が熱るのを感じた。
 思わず再度視線を逸らしてしまう。あからさますぎると自覚はあったが、目を合わせていられなかった。

 心臓の音がうるさく、聞こえてしまわないか不安になる。


(あーもー嫌だな……)


 六花は顔の熱りを冷ましながら再び鍋の火を付けた。


「りーっか」
「きゃっ!」


 惺久の吐息が耳にかかるくらいの至近距離で話しかけられ、六花はビクッと身を震わせる。


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