離婚前提のはずが、策士な弁護士が離してくれません。


 ふとその時惺久と目が合った。
 惺久は気まずそうな、複雑な表情を浮かべて六花たち親子を見守っていた。

 その惺久の表情を見て、六花は悟る。


(ああ、惺久さんは知っていたんだ……)


 惺久は冬実と六花が親子だと知っていた。
 会話からして以前、冬実が惺久に弁護を依頼したことがあったのかもしれない。
 その時に六花のことを聞いたのかもしれない。

 惺久は一度だけ母親のことを訊ねたことがあった。
 本当はあの時には冬実のことを知っていたのではないだろうか。

 いや、もしかしたら最初から知っていたのかもしれない。


(惺久さんは私が糸井六花だと名乗った時、ものすごく驚いていた。夏芭ではなかったからじゃなく、あれはもしかして――私がお母さんの娘だったから?)


 冬実に頼まれ、六花を探すように言われていたのだとしたら?

 最初から自分が冬実の娘だったから、契約結婚を持ちかけたのかもしれない。
 ゆくゆくは六花と冬実を会わせるために。

 最初から冬実と惺久は繋がっていて、グルだったのだ。

 六花の思考はかなり飛躍していた。
 喉の奥がひりつき、指先は冷えていく。

 冷静に考えればおかしいことに気づけたと思うが、今の六花には無理な話だった。
 とてもじゃないが、まともな思考回路で考えることは難しかった。


(私は騙されていたんだ……)


 ただ愛した人に裏切られたという失望感で打ちのめされていた。


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